『銀の匙』はどんな漫画か?
荒川弘による農業青春漫画です。進学校で挫折した八軒勇吾が、北海道の大蝦夷農業高校(エゾノー)に入学。動物の世話、食の現実、農業の厳しさに直面しながらも、個性豊かな仲間たちと共に成長していく物語になります。生き物の命と向き合い、将来や家族との関係に悩みながら、自らの生き方を模索する姿がリアルに描かれていて、笑い、涙、学びが詰まった等身大の青春ストーリーです。
購入した経緯は?
子供が小学校の高学年になった時、漫画に興味を示していたので、何か学びになるような作品がないか探してみようと思いました。 これからの進路や自分がどうなりたいかを探すきっかけになるような物語を読ませてあげたいと思い検索したら、「これも学習マンガだ」というサイトを見つけ、この漫画の存在を知りました。面白そうだなと思ったのですが、子供に読ませる本なので慎重になり、数ある漫画の中からこれでいいのか他と比較して何日か悩みました。進学校から農業高校に進学した主人公の物語で、舞台は北海道。動物なども出てくるようなので、自然がすきで、動物好きなうちの子にはいいかもしれない、学びが得られると思い購入に至りました。
実際に読んでみてどう思いましたか?
この漫画を選んで正解だった。こんなに面白くて生き方を学べる漫画があったのか、という驚きと感動でいっぱいになりました。息子を持つ母として、主人公の八軒くんの悩みや成長が我が子と重なり、何度も胸が熱くなりました。ただの高校生の青春物語ではなく、子どもたちが自分の道を迷いながらも一歩ずつ見つけていく姿が丁寧に描かれています。特に、八軒くんが「正解のない答え」と向き合いながら成長していく様子は、子育て中の親としても学ぶところが多かったです。進学校で落ちこぼれ、父親が怖くて自信がなくなっていた八軒くんが、農業や飼育という自然や動物を相手に生活することによって変わっていき、最後は恐れていた父親に自分の将来のやりたいことをプレゼンできた場面は、親として心から感動せずにはいられませんでした。環境や良い仲間に恵まれると、こんなにも人は変われるんだなと読んでいて嬉しかったです。
漫画の特徴は?
この漫画の特徴は、農業高校を舞台に、命と食、労働の現実を真正面から具体的に描いた点です。豚や牛など家畜の飼育、解体、農作業など、命をいただく現実を避けずに描写しています。作者の荒川弘が実際に北海道出身で、農業高校を卒業していて酪農家であったことが漫画に大きな影響を与えていて、よりリアルで具体的な描写に繋がっていると思います。農業高校の一日の生活や勉強内容、どんな生徒たちが通っているのか、将来の就職先が細かく綿密に描かれているので、この漫画を読めば農業高校とはどんなところなのかがこれ以上ないくらいよくわかります。実際の作者の経験が反映されているので物語に説得力があり、他の漫画との差別化ができていると思います。
購入する際の注意点は何ですか?
「食」と「命」のつながりを非常にリアルに描いている点です。家畜の飼育だけでなく、その命をどう扱うかという過程、ときには解体の描写までが登場します。動物が命を落とす場面や、食の裏側に触れることに抵抗がある人にとっては、読んでいて辛く感じる場面があるかもしれません。農業高校ならではの専門用語や日常も細かく描かれているので、農業に馴染みのない読者は少し戸惑うこともあるかと思います。単なる青春ものではなく、「生きること」や「働くこと」への真剣な問いかけを含んだ作品なので、その点が深く心に刺さってしまう方は注意が必要かもしれないなと感じました。
一番良かったところはどんなところですか?
自分で考えることの大切さを教えてもらったことです。八軒くんが仲間の駒場くんの家の廃業問題に直面する場面があります。駒場くんは家業の酪農に真剣に取り組んでいましたが、経済的な理由から夢を断たれます。その姿に八軒くんは何もできない無力さを痛感しながらも、「じゃあ自分にできることは何か」を考え始めるんです。子どもを育てる親として、努力してもどうにもならない現実に直面した時、どう気持ちを整理するかって本当に大切だと思います。このエピソードは、夢と現実の間でもがく若者たちの姿がリアルで、息子の将来と重ねて涙が出ました。努力だけでは乗り越えられない壁があること、でもそこで立ち止まらず考える姿に、大人も励まされますし、温かい気持ちになれました。
著者の人柄や性格は?
作者は北海道出身で、家業が酪農家だったこともありとてもおおらかで気さくで面白い方のようです。「百姓貴族」という、作者とその家族の実体験を描いた漫画があり、その中に面白エピソードがたくさん出てきます。朝から晩まで酪農しながら時間を見つけて漫画を描書かれていて、ほとんど睡眠時間のない生活で体力的にものすごく鍛えられたようです。出版社は小学館で、販売冊数は累計1700万部を超えています。銀の匙のホームページを覗くと、ファンからの直筆のメッセージが公開されていたり、登場する高校の生徒手帳や校歌が作られていたりしてとても愛されている作品だということが分かります。

漫画で得た知識や考え方などを活かして今後どうしていきたいか?
迷った時は、とりあえずやってみようと思いました。体験してわかることがとても大切なんだと感じます。知識だけで知っているよりも、自分でやってみて知ることは、成長するスピードが段違いなんだなと思います。そして、子供の考えや想いを邪魔することなく見守ってあげれるよう親も学ばなければいけないなと思いました。色々なことを教えてくれる最高の漫画だったと思います。

最後に一言
進路に迷っている子供や、何かしなければと焦っている大人でも、この漫画を読むと前向きな気持ちになれると思います。

