『笑う大天使(ミカエル)』はどんな漫画か?
川原泉による学園コメディ漫画です。庶民派の少女、斎木和音が、亡き母の遺言で超お嬢様学校・聖ミカエル学園に転校。周囲とのギャップに戸惑いながらも、同じく庶民出身の雪乃や更科と親しくなり、三人は学園内外で起こる誘拐事件や陰謀に立ち向かいます。上流階級の風習や世間とのズレを風刺しつつも、友情や正義を貫く姿が描かれていて、笑いあり感動ありの物語です。作者の独特なユーモアと知的なセリフ回しが光る、魅力満載の作品です。
購入した経緯は?
当時、古本屋さんが家の近くにあり、気分転換に時間ができるとよく通っていました。 何か面白そうな本がないか探していると、「笑う大天使」という本が目に留まりました。とっても可愛い絵の漫画がたくさんある中で、この漫画だけ不思議な雰囲気の表紙だなと思い手に取ってみたんです。パラパラとめくってみると、なんとなく気になって買ってみることにしました。家に帰って中身を読むまでは、面白いのかな?どんな漫画なんだろうと不安と期待がありました。

実際に読んでみた感想は?
読み始めて数ページたつと、じわじわと面白さが広がっていき、最終的には、この漫画は私の大切な一冊になりました。もう何年も側にあり、ふとした時に読みたくなります。作者の川原泉さんの哲学的なユーモアが物語全体に散りばめられていて、漫画なのに文字数がとても多いです。
くすくす笑ったりぷぷっとなったり、勉強になったりして、作者の色んな知識の深さに驚きました。主人公の3人の女子高生が、お嬢様学校に通ってはいるのですが根は庶民という設定に親近感が湧きます。この物語の中には、悪者も一部出てくるのですが、それ以外は皆無邪気でいい人です。お嬢様たちも、家族も、先生も、それぞれの優しさを持っています。
そして、全員が自分の土俵で生きていて、分をわきまえています。努力ではどうにもならないものがあることを知っていて、その中で一生懸命生きている健気さに感動しました。悲しい気持ちや辛い気持ちを表に出さずに、そっと胸にしまう姿にほろっときます。こんな漫画があったんだという驚きと嬉しさで、夢中になって川原泉の作品を買い集めました。
漫画の特徴はどんなところですか?
この漫画の特徴は、川原泉独特のユーモアと知性が融合した作風にあると思います。一般的な少女漫画が恋愛や感情の揺れに焦点を当てるのに対し、哲学的な視点や社会風刺を取り入れ、笑いを交えつつも鋭い洞察を見せています。数々のお嬢様や育ちの良い教師、兄、神父などが出てくる中で、主人公は普通の少女です。お金持ちの生活にも慣れないし、言動も庶民的。主人公の3人はどう頑張っても自分たちがお嬢様になれないことを知っていて、そんな自分達を自分で笑いながら、日々の当たり前の幸せを大事につつましやかに生きていきます。かといって、後ろ向きではなく常に前を向いて一生懸命自分なりに頑張りながら、それぞれの優しさを忘れずにいる姿が健気です。決して煌びやかではないごく普通の特徴の少ない少女が主人公なので、読んでいて共感でき、一緒に体験を追従できるのも強みではないかと感じました。
漫画を購入する際の注意点は?
シュールな笑いや、知的な言い回しが多いため、ストレートな感情表現や恋愛中心の物語を求める人にはやや読みづらく感じられるかもしれません。登場人物はユーモアにあふれていて、目が・(点)で書かれている場面も多々あります。そういった軽やかな絵柄に反してテーマが深いため、軽い学園ものを期待するとギャップを感じる可能性があります。
一番良かったところはどんなところですか?
表立ってひけらかさない優しさ、相手を気遣う気持ちが、セリフではなくほんの一コマの表情で表現されていることに感動します。主人公である和音の兄、正臣が何度かお見合いをする場面があるのですが、必ず和音を同席させ3人でデートをします。高校生の和音は遠慮したいのですが、必ず兄が同席させるのです。その真意は、自分よりも幼くして辛い思いをしてきた妹を可愛がってくれる人でないとダメだからというもの。普段は貴族のように高貴で礼儀正しく、年の離れた妹の扱いに手こずっている兄の気持ちを知って胸が熱くなりました。それを延々と感動させるようにセリフなど並べ立てるのではなく、一瞬の兄の表情などで最大限表現されています。今まで読んだことのない、漫画の持つ奥深さを感じました。

著者の人柄や性格は?
膨大な知識を持つ作者だと思います。恋愛ものの本を読むことはほとんどなく、好きなのはSFやホラーだそうです。鹿児島大学の法学部出身ということを知り、なるほどと納得しました。ファンの間では親しみをこめて、「カーラ教授」と呼ばれています。「小人たちが騒ぐので」という作者の日常を描いたエッセイコミックも出版されているそうです。
漫画で得た知識や考え方などを活かして今後どうしていきたいか?
無理をして背伸びをせず、自分のままで個性を伸ばし、どんな時も前向きに生きていきたいと思いました。普段、当たり前にある幸せを忘れることなく、この少女たちに負けないように一生懸命過ごしていきたいと思います。そうすると自然に良い人間になれることを教えてもらった気がします。
最後に一言
物語のページをめくると、そこには川原泉の独特の知性とユーモアの世界が広がっています。深い意味をもった物語を、是非色んな人に読んでもらいたいと思います。

